宗教
(3章後半から・4章にかけて)
 世の中というのはいろんな国の形態があります。日本やアメリカのような民主主義国家もあれば、中国のように軍事力を背景とした共産・社会主義があったり、それをさらに強化した感じでは軍そのものが政治に関わっているミャンマーとか北朝鮮があります。さらには宗教をベースにしたような法律をかたくなに守ろうとして委託にも存在していたわけで、いまの状況を一言で言えば新しい対立軸として宗教が問題化しているという状況です。
 タクティクスオウガの世界でも第4章の開始時にその徴候が見えていました。フィラーハ教団の力が急速に伸びてきてブリガンデス城を占拠してしまいます。このときはデニムの起点もあり、さらにデニムとフォーリナー4姉妹さらにその父親モルーバのおかげで勢力に組み入れることになるのですが、もしデニムが敵対行動を取るようなことがありますと最大の敵を作ってしまう可能性がありました。
 宗教のより問題は、ヨーロッパではその影響は広がりだしていて、中東からやってきた移民が現地社会に溶け込もうとせず、地域コミュニティーを勝手に創り上げて、さらに勝手にテロ問題などを引き起こす連中に利用されていくという問題です。ロンドンで起きた同時爆弾テロ事件(*1)の背景の一つにはこういうコミュニティーの存在があったわけで、今では移民排斥運動(*2)に直結するまでになっていますが、オランダのように根付いてしまった国(*3)もあるわけで、かなりの問題になっているような気がします。さらに一部の国では他の国の移民が潜在的に大問題を起こしている(*4)ので、だんだんそれだけで住むような状況では無くなっている感じがします。
 こういうのは問題になってくるでしょうが、今や世界的宗教になったイスラムと日本で事件を起こしたオウムとは似たもの同士だと感じる部分があります。その広がり具合に恐ろしいほどの共通項があるわけです。最初は本人と家族もしくはその周辺だけにしかないマイナーなものだったのだが、それがだんだん触媒のように伸びていき、たくさんの妨害などを経て巨大化していくという過程でした。ただオウムとイスラムの違いは、時代が違ったがゆえに今でいうカルト(*5)認定されることがなく危険視をされても影響が少なかったことでしょう。オウムの場合はその最初の段階でのやばさから、カルトとはいかなくとも問題はあるという認識がありましたから。
 ただそういうカルト認定された教団が暴発するとどうなるのかといえば、独裁者がたどった道と同じくジェノサイドもしくは集団自殺の二つになります。オウムも内部の権力を保つためにその欲望の犠牲になった人がたくさんいます(*6)し、海外に目を向けてみれば集団自殺という名の大量殺人(*7)があります。大宗教とて同じ話でイスラムの原理主義の暴走は、イスラム社会の中においても軋轢の元になっていますし、テロリズムを生み出す土壌にもなっています。タリバンによるバーミヤンの石像破壊(*8)なんかはその典型例で、あれでイスラム教に対するイメージが大きく変わったという人も結構いると思います。
 今でいう巨大宗教とて最初はカルト並もしくはそれ以下の扱いをされたことがあります。たまたま生まれた時期が生まれた時期だっただけに迫害をそれほど受けなかったというのもあります。その結果イスラム教の人口は前世界の人口の4分の1になるまでになりましたが、同時に巨大宗教故に、その解釈(*9)をめぐって世界中での軋轢の問題になってしまっています。そういう意味では宗教勢力そのものを否定する今の社会主義や共産主義(*10)というのはある意味優れているのかもしれませんが、内包している問題はそれすらも突き破ってしまいそうです。このままの状況が続くとすれば、いずれ宗教=絶対悪という感じになってきそうな情勢にもなっているような気がします。

 注釈。
 (*1)……2005年に発生。4人の自爆テロにより、犯人を含む56人が死亡。犯人の中には1週間後に結婚式を上げる人、子どもがいる人、さらには少年二人ということも衝撃を与えた。しかも犯人の4人は中身がなんだったのかと分かっていなかったという話も。この事件によりイギリス住民とイスラムコミュニティの関係は大きく悪化。サミットにも影響を及ぼして、議題が変わってしまったほども。この事件によってビン・ラディンの人気に陰りが出てきたというのが唯一の救いという感じが。
 (*2)……その矢面にたっている国はアメリカ・イギリス・フランス・ドイツで供給側はトルコ・メキシコ・中国・アフリカ諸国。特にイスラム教徒との軋轢は半端ではなく、フランスでは社会問題化している。
 (*3)……ゴッホの孫が殺された事件を代表するようにイスラム系の住民がそこらじゅうに根づいていて、今や排除仕様にも出来ない状態になっているとも。原因は政治。受け入れをし続けた結果そうなったとも。推進派は逃げてしまったという指摘もあるぐらい、無責任政策の象徴事例になりそうな感じ。
 (*4)……福祉が分厚い国が被害にあいやすい。入国をして福祉をたんまりと受け手、子供を養育。その子どもが育った段階で、子供ごと祖国に帰国するということがある。結果的に言えば金の使い損になるわけで、新しい形での移民問題に発展する可能性もある。
 「子どもを作っていればそれだけで金が入る」(マイク・タイソンの発言から)
 (*5)……ヨーロッパなんかはその基準がかなり厳しく、日本では大きなものであっても、カルト認定をされることがあるし、たいていカルト認定されてしまうということは問題を引き起こす可能性もしくは引き起こしたというケースが大きくなってくる。
 ちなみにカルトのことをセクトと読んで、その団体を政府が認定して公表するという動きがあった。オウムはベルギー・カナダで認定。創価学会もフランス・ベルギー・ドイツでセクト認定されている。
 (*6)……地下鉄サリン事件・松本サリン事件・弁護士一家殺害事件など。特に最後の件に関してはTBSがオウム関係者に取材テープを見せていたことも発覚して、検証番組を放送したのだが、内容は不十分。続くニュース番組の司会の「TBS死亡」発言が飛び出すまでの問題に発展した。
 (*7)……代表的なところで言えば人民寺院事件。人種差別撤廃を元にして立ち上げた宗教だったのだが、中身は全くの独裁状態でマスコミなどの批判を受けるようになる。さらに教祖は極左思想にとらわれることが多くなり、ガイアナに移住。それでも問題が大量発生をしてアメリカの議員が視察に来るのだが、洗脳されまくっていた信者により殺害。飛び立つ飛行機のパイロットが逃げ切ったことから事件は発覚するのだが、ガイアナの軍がアメリカの妖精で到着していたときには集団自殺を敢行した後だった。その犠牲者は900人(ただし3分の1は殺されたか)で4分の1以上が18歳以下の子供だったことから衝撃が大きく広がった。たださらに問題になりそうなのは、この点に関しての公文書が非公開だということ。それは政府の中枢にまで入り込んでいた可能性を思い起こさせてしまう。事件後「カルト」に対する目が厳しくなったのは言うまでもない。
 他にもウガンダの終末論を唱えた宗教による大量殺人や、FBIとの銃撃戦との末に集団自殺(これに関しては司法関係の大ミス説がいくつもある)。さらには二箇所で集団自殺を引き起こした集団もある。
 (*8)……タリバンのこの行為を「文化的ジェノサイド」と呼ぶ人もいる。
 (*9)……イスラム教はその解釈によって大きく言えばスンニ派とシーア派に分かれる。さらにそのスンニ派から4つの学派に分かれ、さらに別な形で問題となっている原理主義がある。一方シーア派もいくつかに分かれ、さらにそのうちのいくつかはイスラムというカテゴリーからは外されている格好になっている。これは仏教もキリスト教も同じ事で、誰を基準にするか聖書をどう扱うのかで大きく別れてくる。
 (*10)……とはいえ最近こういう動きとそれを抑えようとする動きが問題になっているのも事実。ロシアの場合はチェチェンの独立問題がそれで、それを潰そうとするロシアとそれに対抗するチェチェンのほうでの軍事的衝突が今も絶えない。双方多大な犠牲を取っ払うも、こういうテロ組織がおこした人質事件でのロシアの姿勢(人質を殺してもいいから犯人を射殺する→結果劇場占拠事件でも、学校襲撃事件でも多くの犠牲者を出すことにり、批判を浴び続けることになるる)や、女性を使ってテロ行為を敢行しようとするチェチェンテロ組織側に対する世界中の大批判が止まらない。
 中国にいたっては宗教的動乱が起こると、その国の体制は完全に潰れてしまう(黄巾の乱・義和団の乱など)ことから必死になって鎮圧に乗り出しているのだが、逆にアメリカに攻撃の材料を与えているだけという指摘も。

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